旅先でのオツトの振る舞い

日記

ハイアットリージェンシー那覇のクラブラウンジは18階にあり、那覇の街並みが一望できる。
11月下旬というのに太陽の光が反射して街がキラキラとしている。
そんな素敵な景観を眺めながら昼からビールを飲む。
ビールが大好きな僕にとって、最高のひとときである。

それにもかかわらず、この歳になってからというもの、調子に乗って飲みすぎるとすぐに胃をやられてしまう。
そんな訳で、昼に飲むビールは1杯までと決めている。

「詰子ちゃん、大好きなビールが1杯しか飲めないからツラいよ」
「そんなにツラいなら飲まなければいいんじゃない」
「はぁ~、詰子ちゃんは悲しいことしか言ってこないな」
「ハハハハ。オツトくんは文句しか言ってこないよ」

詰子が飽きれた顔をして続ける。

「だって飲むとツラいなら飲まなければいいじゃん」
「詰子ちゃん、ちがうよ。飲むのがツラいんじゃなくて、飲めないのがツラいの。わかる?」
「1杯飲める楽しさは棚に上げて、飲めないツラさだけ言ってくるじゃん」
「うん」
「それが文句しか言ってこないってこと。せっかく飲めるところに来ているのに自分の体調管理のせいで飲めないことに文句を言ってくるもん」

僕はしばらく考え込んだ。

「詰子ちゃん、この席、太陽の光が眩しいね」
「ハハハハ。本当に文句しか言ってこない」
「でもさ、詰子ちゃん、この席、眩しいでしょ?」
「眩しいね」
「ほれ、見てごらんなさい」

別の日。

今日も昼から飲むビールが美味しい。
先ほど飲みすぎ防止のため、昼に飲むビールは1杯までと決めていると書いたが、それだけでは不十分らしく、実は晩酌もビールは1杯までと決めている。
とは言いつつもビールが美味しすぎるので、昼にも2杯目を飲む口実を探したい。

「詰子ちゃん、いいことを思いついちゃったよ」
「何?」
「今からビールをおかわりして、夜ごはんのときはビールを飲まないでおこうと思うんだけど……どう思う?」
「どういうこと?」
「今から飲んで夜に飲まないから、プラマイゼロってこと。すごくナイスなアイデアじゃない?」
「!? どこからどうやったらプラマイゼロになるのか、全然理解できないんですけど」
「難しい?」
「難しい」
「はぁ~、詰子ちゃんには難しいか~」

飲み過ぎ防止ルールを決めたくせに、結局飲みっぱなしだ。
酔っぱらうと聴力もおかしくなる。

旅行好きの詰子がハイアットハウス東京渋谷について話してくる。

「東京のハイアットハウスは各部屋に洗濯機がついていて、1泊5万円くらいするらしいよ」
「えっ、部屋にケンタッキーがついてるってどういうこと?」
「おいオツト、お前、喧嘩売っとるんかて」

では、味覚はどうだろう。

「詰子ちゃん、俺さ~、昔からさんぴん茶が苦手だったんだけど、今はそうでもないよ。どうしてだろう?」
「きっと味覚が変わったんだよ。っていうか、どんどん老人になってるってことだよ」
「ん〜、どういうこと?」
「子供はピーマンとかわさびがダメだけど、大人になると美味しく感じるように、老人になると味覚が変わるっていうこと」
「くぅ〜、老人か〜」

つまり、味覚に関してお酒は関係ない。
味覚の変化は、単なる老化ということのようだ。

さらに別の日。
あいかわらず今日も飲んでいる。
酔っぱらうと声も大きくなる。

例えば食事中、詰子がローストビーフを箸で口に運ぶと、その肉が箸から落ちた。
つい僕が大声をあげる。

「あぁ〜っ」
詰子がこちらを見てくるので、それに答える。
「いや〜、落ちたからビックリしたよ」
「おいオツト、うるさい。なんでお前がビビるんだて」

詰子に言わせると、僕は酔っぱらってなくても声が大きいそうだ。
クラブラウンジでコーヒーを飲もうとするとカップがない。
スタッフに聞いてみる。

「すみません、カップがないんですけど」
「ちょっと切らしておりまして紙コップで代用してください」

洗い物が間に合ってないのか、ないようだ。
席に戻ると、詰子が聞いてくる。

「何を話してたの?」
「カップがないんだって」
「すごい大きな声だったよ」
「ーーーー」

滞在中にこんなこともあった。
朝食での出来事。
ゆで卵を食べようとしたときテーブルに塩がないことに気づいた。

「あれ? ここ塩ないじゃん」

ひとりごとのようにつぶやいただけだったが、思いのほか大きな声だったようだ。
そばにいたスタッフが僕の声に気づいて、すぐに塩を持ってきてくれた。

「オツトくんすごいね」
「天才的でしょう?」
「恥ずかしくないの?」
「全然。ナイスって感じ」
「あのさ~、私が恥ずかしいんですけど」

そんな詰子を前にして、ゆで卵に塩を振る。
「詰子ちゃんの服が黒だから塩がどれくらい出てるかよく見えるよ」
「ハハハハ(ダメだな、こいつ)」

あとがき

ひとことで言えばダメ人間です。
詰子も諦めているようです。

さて、ハイアットリージェンシー那覇のクラブラウンジにはビールサーバーがあり、7:00~20:00までフル稼働しています。
ビールが大好きな僕としてはこれ以上ない環境なのですが、同時に自制心が効かなくなる環境でもあります。
旅行のときくらい適当でいいやという気持ちが大きくなってしまいますね。

まぁ、ご機嫌になるからOKということで。
詰子ちゃん、楽しかったね。

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