夕方、リビングに向かうと、妻の詰子が額に手を当てながらこちらを振り向いた。
「オツトくん」
呼ばれて顔を上げると、彼女はどこか不思議そうな表情をしている。
「なに?」
「なんかね、記憶がないんだけど……ここに、たんこぶができてる」
そう言って、前髪をかき上げて見せてくる。確かに、指先の下に小さな膨らみがあった。
「ハハハハ。転んだとか、打ったとか、覚えてないの?」
「覚えてない」
「腫れてるの?」
「腫れてる」
「痛いの?」
「痛い」
彼女は淡々と答える。
「ん~、心当たりがないのに、たんこぶはビビるね、詰子ちゃん」
「べつに……」
その無関心さに、思わず笑いがこぼれた。
「ハハハハ」
あとがき
べつに……って、沢尻エリカか。
それにしても、いつの間にかアザ、いつの間にか切り傷…などは経験がありますが、いつの間にかたんこぶとは。
僕ならビビってしまいますが、さすが詰子ちゃん。
全くノーダメージです。
さて、その後たんこぶも治癒したようで問題ありませんでしたが、いったい何だったのだろう?
半世紀以上も生きているのに、はじめての出来事に出くわすなんて。
今年もいろいろありそうです。


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