名古屋から南紀白浜に向かう。
4泊5日間で白浜町とすさみ町に滞在し温泉を楽しむ予定だ。
とても楽しみなのだが、白浜まで約320km、車で5時間ほどの距離で、運転が嫌いな僕としてはかなりツラい。
順調に高速を走っていると、工事渋滞の情報が表示されている標識に気づき、ついつい文句を言ってしまう。
「『工事渋滞7km35分』って書いてあるがや〜。も〜、工事は夜中にやれよな」
「ハハハハ」
大笑いする妻の詰子を見て、聞いてみる。
「詰子ちゃん、今、『コイツ毎回同じこと言っとるがや』って思ったでしょ?」
「うん。だって、毎回同じこと言ってるもん」
文句を言っても渋滞は解消されない。
仕方がないので覚悟して渋滞に突っ込む。
しばらく走ると渋滞の最後尾が見えて、完全に止まってしまった。
渋滞はツラい。
やることがなく、時間が経つのが遅い。
20分くらい経ったかなと思って時計を見ても2分しか過ぎていない。
ただ待っているだけで何の生産性もない。
突然、詰子が大きな声を出す。
「フッ。フ〜ッ」
「何してるの?」
「暇だなと思って、後部座席にあるスマホを取ろうとしたんだけど……体が回らない」
詰子が助手席から後部座席に向かって上半身をひねり、手を伸ばしているが届かない。
まるで止まりかけた時計の秒針が同じ場所でカクカクしている感じだ。
「ムリだ」
そう言ってシートベルトを外し、シートを一番後ろまで下げ、背をリクライニングさせて、掛け声とともに身体を思いっきりひねる。
「フ~ッ」
「取れた?」
「取れた」
「ハハハハ」
詰子の暇な時間も、これでしのげそうだ。
それから時間が流れ、工事渋滞の標識に書かれていた35分が過ぎた。
未だに渋滞を抜ける気配はなく、2kmほどしか進んでいない。
やけに詰子が静かにしているなと思って見てみると目をつぶっている。
思わず笑った。
「ハハハハ」
「何?」
「静かだなと思ったら寝てたからさ」
「オツトくんはちゃんと前を向いていて」
そう言って詰子はまた目を閉じた。
あとがき
結局、渋滞を抜けるのに1時間半かかりました。
南紀白浜に到着したのも予定より1時間半遅れでした。
やれやれ。
僕は車の運転が嫌いです。
渋滞はもっと嫌い。
いや、違うな。
運転してなかったら渋滞は気になりませんね。
たぶん、詰子も運転していないので気にならないのだと思います。
それはさておき、美味しい食事と温泉を満喫するぞ。
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