相手をよく知ることで、慈愛の心が生まれます。

閉店間際のスーパーマーケット
妻の詰子とスーパーマーケットにやってきた。いつものように詰子がカートを押しながら、ふたりで並んで進んでいくと、陳列棚の切れ目に差しかかった。次の島へ進むか、それとも左に曲がるか。そこで僕たちの動きがすれ違った。詰子は右側からふいに左へと身を...

胃薬は先手必勝?
僕は胃腸が弱い。暴飲暴食をすると必ず胃が痛くなり下痢を起こす。にもかかわらず、外食をすると調子をこいて食べて過ぎてしまい、胃薬を飲むことになる。妻の詰子はそんな僕を見て呆れて笑う。先日、詰子に誘われてピザの食べ放題に行った。詰子のお気に入り...

詰子ちゃんなら傘なしで
今日は朝から雨が降っている。すっかり秋めいて涼しくなった。妻の詰子が出かける支度をしている。徒歩で3分の距離にある職場に、これから出かけるようだ。詰子が聞いてくる。「雨降ってる?」「たぶん」「どのくらい?」「ん~、さっきは結構降ってたけど、...

オツト、またひとりでやらかす
僕は寝酒に焼酎を飲む。飲むときは決まってお湯割りだ。夏だろうが冬だろうが関係ない。お湯を沸かすときは電子レンジを使う。沸いたのでカップを取り出したら、アツアツのお湯が手にかかってしまった。「あっつ〜」妻の詰子を見ると、呆れた顔をして言ってく...

オツト、寝てるだけなのにうるさい
朝起きると、どうも体が重い。リビングに行くと妻の詰子が朝食を取っている。「詰子ちゃん、おはよう」「おはよう」「なんか、体がすごい疲れてるよ」「どうしたの?」詰子が心配そうに聞いてくる。「なんか、最近、俺、自分のいびきが聞こえてるような気がす...

賞味期限は笑いで超える
お腹が空いたので何か食べようと冷蔵庫を開けた。奥に冷凍餃子を見つけたが、賞味期限を確認するととうの昔に切れている。妻の詰子に相談する。「詰子ちゃん、この餃子、賞味期限切れてるんだわ」「いつまで?」「去年の9月24日。ちょうど1年前だな」「ハ...

見えない自販機と見えない未来
妻の詰子は、夜な夜な、我が家から歩いて三分ほどの距離にある事務所(詰子の職場)に出かける。誰もいない事務所でお茶を飲み、ひとりの時間を楽しんでいる。今日も出かけるのかどうか気になったので聞いてみた。「詰子ちゃん、今日も事務所に行くの?」「ち...

詰子、夜勤に行く
近頃、妻の詰子に変な癖がついたようだ。詰子の職場は我が家から歩いて三分ほどで、坂道を下ればすぐに辿り着ける距離にある。夜になると「ちょっと夜勤に行ってくるわ」と言って玄関を出ていくのだ。向かう先は、職場のすぐそばにあるコンビニ。目的はただひ...

聞こえてるようで、聞こえてない
僕は二つのことを同時にできない。テレビを見ながら他人と会話をするなんてもってのほかだ。妻の詰子が話しかけてくるが、テレビに集中しているせいで、その場しのぎの言葉を並べてるだけの曖昧な返答をしてしまう。「ちょっとオツトくん、さっきから全然、私...

美顔器と沈黙の詰子
妻の詰子が鏡を見ながら顔に美顔器をあてている。「詰子ちゃん、何やってるの?」無視して鏡とにらめっこだ。「詰子ちゃん、聞こえてる?」「フフフ……」微かに鼻を鳴らして、含み笑いをしている。仕方がないので、大きな声で呼んでみる。「おーい、詰子ちゃ...