相手をよく知ることで、慈愛の心が生まれます。

見えない自販機と見えない未来
妻の詰子は、夜な夜な、我が家から歩いて三分ほどの距離にある事務所(詰子の職場)に出かける。誰もいない事務所でお茶を飲み、ひとりの時間を楽しんでいる。今日も出かけるのかどうか気になったので聞いてみた。「詰子ちゃん、今日も事務所に行くの?」「ち...

詰子、夜勤に行く
近頃、妻の詰子に変な癖がついたようだ。詰子の職場は我が家から歩いて三分ほどで、坂道を下ればすぐに辿り着ける距離にある。夜になると「ちょっと夜勤に行ってくるわ」と言って玄関を出ていくのだ。向かう先は、職場のすぐそばにあるコンビニ。目的はただひ...

聞こえてるようで、聞こえてない
僕は二つのことを同時にできない。テレビを見ながら他人と会話をするなんてもってのほかだ。妻の詰子が話しかけてくるが、テレビに集中しているせいで、その場しのぎの言葉を並べてるだけの曖昧な返答をしてしまう。「ちょっとオツトくん、さっきから全然、私...

美顔器と沈黙の詰子
妻の詰子が鏡を見ながら顔に美顔器をあてている。「詰子ちゃん、何やってるの?」無視して鏡とにらめっこだ。「詰子ちゃん、聞こえてる?」「フフフ……」微かに鼻を鳴らして、含み笑いをしている。仕方がないので、大きな声で呼んでみる。「おーい、詰子ちゃ...

旅先では、なぜか食べすぎる
セントレアにあるフォーポイントバイシェラトンに泊まっている。普段の生活では朝食を取らないのに、旅先での朝食ビュッフェはいつも食べ過ぎてしまう。不思議だ。今日も例外なく、お腹がパンパンだ。もうすぐチェックアウトの時間になるので帰りの支度をして...

裏返しでも前向きに
セントレアにあるフォーポイントバイシェラトンに泊まっている。これから空港内のレストランで夜ごはんを食べる。空港まではホテルの送迎バスで行く。「詰子ちゃん、そろそろバスが来るから行くよ」「うん、わかった」部屋であわてて支度をしている妻の詰子を...

詰子、肉を食らう
中部国際空港セントレアに行くため知多半島道路を走る。途中の大府SAで昼食を取ることにした。車を停めて歩いていくと立て看板があり、そこにある大きなチャーシューがのっているラーメンの写真に目がいってしまう。「詰子ちゃん、何食べる?」「北海道味噌...

詰子、腰をやる
妻の詰子がツラそうな顔をして仕事部屋に入ってきた。「オツトくん、腰がすごい痛いんだわ」「どうして?」「わから〜ん」軽いぎっくり腰のようだ。詰子は泣きそうな表情をしながら、牛歩の運びでリビンクまで何とかたどり着く。「詰子ちゃん、大丈夫?」「う...

昭和チョップと令和AI
我が家に固定電話がある。いわゆる複合機というヤツで、15年くらい前に購入したものだここ最近は、ずっと留守番電話になっていて、使ったためしがない。その複合機の液晶画面が点いたり消えたりしている。どうやら壊れたようだ。妻の詰子に報告する。「詰子...

オツト、調子こく
琵琶湖マリオットホテルに来ている。昨日は飲みすぎた。プールに行ったあと、夕方から寝るまで飲みっぱなしだった。二日酔いというほどではないが、やけに体が重い。朝食後、もう一度寝て昼前に起きた。妻の詰子が言う。「オツトくん、大丈夫?」「あ〜、だい...